息が荒い。

どうしてこんなに持久力がないのだろう。



―Endurance running―



今日は訓練だった。

しかも、の大嫌いな持久走である。

は瞬発力系で持久力に自信がない。

だからこそ走るのが嫌なのだ。



「よ!頑張ってんな。」

「あ、ハボック少尉!どうして?」

「俺が今日の訓練監督だ。」



後ろからハボックが走ってきた。

彼は爽やかに汗をかいているが、息ひとつあがっていない。

自分は汗でぐしゃぐしゃの顔で、息も完全にあがっている。

なんだか恥ずかしいと思うと同時に、悔しかった。



「監督が何でこんな後ろにいるんですか!?前で先導しないと。」

「あー、速い奴にはもう次の指示が出してある。俺は後ろの心配してんだよ。」

「はいはい、遅くってすみませんね。」



は脹れた。

足が遅いことなんて自分がいちばんよくわかっている。

ゆっくりと通り過ぎる景色に嫌気がさして。

悔しいくらいに晴れ渡った空が気に入らない。

そして何よりも隣で息も乱さずに走っているハボックが嫌だった。



「おいおい、怒るなって!」

「怒ってません!」

「・・・怒ってるだろ。」



は自分の中の黒い感情に嫌悪して、そっぽを向いてしまった。

慌てて声を掛けるが、完全に拗ねている。

こうなったらもうどうしようもない。

そんな時、ハボックはいつも自己満足のように話すのである。



「遅いのは悪いことじゃない。やるかやらないかの問題だろ?は持久走が苦手でも、逃げずに走ってるじゃないか。 それでいいんだよ。俺はが頑張ってるのを知ってるから後ろを走るんだ。 それに・・・が心配だったから。」



こう言ったハボックの言葉はいつも心に響く。

何度彼に泣かされただろうか。

結局は素直なのだ。

意地を張っても、張り切れていないのだ。

彼の言葉は真っ直ぐにの心の中に入ってくる。

そんなハボックを恨めしいと思うと同時に、愛しく感じるのだ。



「・・・ありがとうございます。」

「機嫌、直していただけますか、お嬢さん?」



ハボックはニカと笑う。

その笑顔は太陽の光に照らされてキラキラと輝いていた。


やっぱり私はこの男が大好きなのだ、と実感した。


残りわずかになった持久走のコース。

2人はゆっくりと走り抜けていった。



―fin―



―あとがき―

やってきました、マラソン大会シーズン!
体育の授業は専ら持久走です。
走りながら「ハボがいたらなぁ」なんて考えてて思いつきました。
本当はもっと明るい話にするはずだったんだけどなぁ・・・

お付き合いありがとうございました。
もっと精進します。

2006.10.25