今日は生憎の雨。



―Sharing an umbrella―



日勤だったは玄関で溜息を吐いた。

雨があまり好きではないのだ。

髪は湿気で広がるし、肌寒いし。

何よりも気が滅入る。

考えているうちに憂鬱になり、再び大きな溜息を吐いた。



「ずいぶん盛大に溜息吐いてんな。」

「あ、ハボック少尉!」



突然後ろからハボックに声をかけられ、びくりとした。

彼も日勤だったようで、今は私服である。

Tシャツにジーンズというラフな格好だった。



「あー、雨か。俺今日傘忘れたんだよな。」

「あ、使いますか?私、折り畳み傘持ってるんで。」

「お、サンキュ。助かるわ。」



空を見上げると少し大粒の雨が落ちてくる。

走って帰ったとしても、家に着く頃にはずぶ濡れだろう。

は持っていた傘を手渡すと、バッグの中を探し始めた。

確か底の方に入れたはず、と呟く。

が、手ごたえはない。



「おい、もしかしてないのか?」

「・・・みたいです。」

「じゃあ・・・入ってくか?」

「え!?いいんですか?」

「だってお前の傘だろ?送ってく」



ありがとうございます、と笑顔で言った。

は自分の頬が赤くないか心配だった。

好きな人に家まで送ってもらうなんて、誰だって嬉しいだろう。

もそんな中の1人だった。

大好きなハボック少尉と帰れると思うと胸が躍る。



のやや小振りの傘の下には2人がいる。

背の高いハボックが傘を持ち、その隣をが歩く。

鼓動が早いのがわかった。



「おい、。もうちょっとこっち来いよ。濡れるだろ?」

「あ、大丈夫です。ハボック少尉も濡れちゃうし。」

「俺はいいけど、お前が風邪でもひいたら俺が困る!」



そう言っての腕を引き寄せた。

触れる腕から熱が伝わる。

は自分の鼓動が速いのがわかった。



2人を入れた傘はゆっくりと着実にの家へと向かっていた。

ハボックはの家を知らないので、が道案内をする。

通り慣れた道のはずなのに、どこか新鮮に見えた。



「ここです。」

「意外と近いんだな。司令部からも・・・うちからも。」

「へ!?」

「俺んちもこっからすぐだ。」



ハボックはニヤリと笑った。

実は家が近いということがわかり、は気恥ずかしかった。

それじゃあ迂闊に買い物にも生けないな、と思う。

そして、玄関を開けて振り返った。



「今日はありがとうございました。」

「や、俺が傘借りたんだしな。当然だ。」

「いえいえ。風邪、ひかないでくださいね。私が困りますから。」

「お、おう。」



また明日、とハボックは踵を返した。

ゆっくりと去っていく影。

は触れていた腕の温もりを思い出していた。



こんな日なら雨も悪くないかな。



影が角を曲がるのを確認して、扉を閉めた。



は気付いていた。

ハボックの右肩が濡れていたことを・・・



−fin−



―あとがき―

定番の相合傘です。
今日の天気が雨だったので、ふと思いついて1日中ニヤニヤしてました(笑
同僚にするか上司にするか凄く悩んだんですけど、上司にしました。
同僚だったらきっとこんな素直じゃない・・・(え
雨の日の描写が好きです。
でも、長くなっちゃうからカットしました。
こんなのですが、楽しんでいただければ幸いです。
さん、お付き合いありがとうございました。


2006.10.23 執筆・up
   稍